尿失禁・尿漏れ:日常生活の注意点

尿失禁は、腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁、 溢流性尿失禁、機能性尿失禁、反射性尿失禁に分類される。高齢者では切迫性尿失禁の割合が多く、年齢が高いほど尿失禁頻度は増加する。尿失禁についての本格的な疫学調査はわが国では行われておらず、正確な罹患率は不明である

*夕方以降の水分およびカフェインを含有する飲料水制限により夜間尿量が減少し、夜間の排尿回数または尿失禁を減らすことができる。(証拠の強度 : C)

**飲水量、アルコール、炭酸飲料と尿失禁の関係について、種々の報告があるが、飲水制限・カフェイン摂取制限などによる尿失禁の改善に関する明確なエビデンスはない(推奨グレード:C1)。

【引用】
*EBMに基づく尿失禁診療ガイドライン 2004
証拠の強度
A:複数(2つ以上)の大規模のRandomized Controlled Trial (RCT)、小規模のRCTレベルの論文により統計学的に有効とされていた治療法
B:統計学的に有効である大規模のRCT、小規模のRCTレベルの論文が1つしかない場合の治療法
C:無作為割付けによらない同時期の対照群を試験、無作為割付けによらない過去の対照群を有するもの・専門家の意見が加わった試験、症例集積研究(対照群のないもの)・専門家の意見が加わった研究でしか有効性が証明されていない治療法

**女性下部尿路症状診療ガイドライン第2版 2019
推奨グレード
A:行うように強く勧められる
B:行うように勧められる
C:行うよう勧めるだけの根拠が明確でない
C1:行ってもよい

C2:行うよう勧められない
D:行うよう勧められる

*喫煙がより重度の失禁のリスクを増大させる可能性や、実験的にニコチンが膀胱収縮を引き起こすことが報告されている。喫煙者に尿失禁が多いとの報告がある(推奨グレード:C1)。

【引用】
*女性下部尿路症状診療ガイドライン第2版 2019
推奨グレード
A:行うように強く勧められる
B:行うように勧められる
C:行うよう勧めるだけの根拠が明確でない
C1:行ってもよい

C2:行うよう勧められない
D:行うよう勧められる

*尿漏れする人は、便秘に気を付けるようにします。便秘で直腸が拡張すると膀胱を刺激しやすくなるためです。

**便秘は、高齢者の尿失禁の程度を悪化させる。適正な食物繊維と水分の摂取により、便秘を改善する(証拠の強度 : C)。

***いきんで排便することが腹圧性尿失禁や尿意切迫のリスクになりうることが報告されているが、便秘の改善による尿失禁への有効性についてのエビデンスはない(推奨グレード:C1

****便秘では腸管内に便が貯留して骨盤底に負担をかけてしまういます。また、排便時に過度な腹圧をかける動作を繰り返すことで、骨盤底のさらなる脆弱化につながります。

【引用】
* きょうの健康 2020/07 山梨大学医学部付属病院 武田正之
**EBMに基づく尿失禁診療ガイドライン 2004
証拠の強度
A:複数(2つ以上)の大規模のRandomized Controlled Trial (RCT)、小規模のRCTレベルの論文により統計学的に有効とされていた治療法
B:統計学的に有効である大規模のRCT、小規模のRCTレベルの論文が1つしかない場合の治療法
C:無作為割付けによらない同時期の対照群を試験、無作為割付けによらない過去の対照群を有するもの・専門家の意見が加わった試験、症例集積研究(対照群のないもの)・専門家の意見が加わった研究でしか有効性が証明されていない治療法

***女性下部尿路症状診療ガイドライン第2版 2019
推奨グレード
A:行うように強く勧められる
B:行うように勧められる
C:行うよう勧めるだけの根拠が明確でない
C1:行ってもよい

C2:行うよう勧められない
D:行うよう勧められる
****泌尿器care & cure uro-lo  23(5):2018.10 p.554-562「腹圧性尿失禁の生活指導・薬物療法・理学療法」 女性医療クリニックLUNAグループ 関口 由紀,

男性は立って排尿することで尿漏れを改善できる。様式トイレで座って排尿すると、尿道内に尿が残りやすく、”ちょい漏れ”の原因になります。これは立って排尿することで改善します。立って排尿する場合、下着の穴が小さかったり、ズボンのファスナーの一が高かったりすると、尿道が圧迫され、尿道内に尿が残る原因となります。この場合、ズボンや下着を少し下しては排尿することで改善できます。

【引用】
きょうの健康 2020/07 山梨大学医学部付属病院 武田正之

*体重増加、BMIと尿失禁との関係について多数の報告があり、食事と運動療法による体重減少により、尿失禁が減少する(推奨グレードA

**肥満では骨盤底に重力がかかり、特に腹圧性尿失禁を悪化させます。

**肥満が尿失禁の危険因子になる理論的背景には、腹部の脂肪が増えることによって腹腔内圧が増え、骨盤底筋の収縮力の低下につながる可能性がある。

****体重を減少させる適度な運動は、尿失禁の改善に有効と考えられているが、逆に過度の運動が尿失禁に関係しているという報告がある。

【引用】
*女性下部尿路症状診療ガイドライン第2版 2019
推奨グレード
A:行うように強く勧められる
B:行うように勧められる
C:行うよう勧めるだけの根拠が明確でない
C1:行ってもよい
C2:行うよう勧められない
D:行うよう勧められる
**泌尿器care & cure uro-lo  23(5):2018.10 p.554-562「腹圧性尿失禁の生活指導・薬物療法・理学療法」 女性医療クリニックLUNAグループ 関口由紀
***Wellness journal 12(1):2016 p.3-11 「中高年女性における尿失禁と生活習慣との関連」福岡大学医学部看護学科 西村 和美
****日本医事新報  (4777):2015.11.14 p.24-29「高齢女性の尿失禁: ベースとなる行動療法とケア 」獨協医科大学排泄機能センター 山西友典

*適度の運動は尿失禁発生のリスクを減少させることが示唆されるが、エビデンスは十分ではない(推奨グレードC1)。

骨盤底筋に圧力をかけるような過度の運動(重量挙げ、エアロビクス)や激しい仕事、重いものを持つ職業が腹圧性尿失禁のリスクになる可能性が示唆されている。

【引用】
*女性下部尿路症状診療ガイドライン第2版 2019
推奨グレード
A:行うように強く勧められる
B:行うように勧められる
C:行うよう勧めるだけの根拠が明確でない
C1:行ってもよい

C2:行うよう勧められない
D:行うよう勧められる

足を組むなどの体位・姿勢変換は尿失禁の予防につながる。

【引用】
日本医事新報  (4777):2015.11.14 p.24-29「高齢女性の尿失禁: ベースとなる行動療法とケア 」獨協医科大学排泄機能センター 山西 友典

*鍼治療は、女性下部尿路症状(尿失禁など)に対する有効性は十分証明されていない(推奨グレード:C1)。

【引用】
*女性下部尿路症状診療ガイドライン第2版 2019
推奨グレード
A:行うように強く勧められる
B:行うように勧められる
C:行うよう勧めるだけの根拠が明確でない
C1:行ってもよい

C2:行うよう勧められない
D:行うよう勧められる

*患者さんが本を読んだり、DVDを見たりするだけでは体得できないのが、骨盤底筋トレーニングの難しいところです。わが国では、紙に書かれた骨盤底筋訓練の方法を説明して指導終了としている医療施設もまだ多いようです。正しい骨盤底筋訓練を獲得してもらうためには、患者さんに対する個別指導が非常に重要です。

**骨盤底筋訓練は尿失禁治療の第一選択と考えられる。腹圧性尿失禁に対する有用性を支持する報告は多く、切迫性・混合性尿失禁に有効であるとも報告させている。腹圧性尿失禁に対する骨盤底筋訓練の効果は、50~70%で改善するが、治癒は15~30%である。女性の切迫性・腹圧性・混合性尿失禁をすべて合わせた短期成績は5~75%が改善、12~16%が治癒であったと報告されている。

***骨盤底筋訓練の指導を行っている施設は93.3%であるが、女性の27.0%は骨盤底筋の収縮ができないとの報告があることから、骨盤底筋を収縮させることができるか医療者が判断する必要がある。また、骨盤底筋訓練が有効となるのは正しい収縮を継続して行った場合である。正しい収縮とは骨盤底筋群だけを意識的に動かすことであるが、初心者では骨盤底筋群だけを動かすことが難しく、腹圧をかけていきむことで骨盤底を上下へ押し下げたり、腹筋、殿筋や大殿の筋肉を動かすことがある。したがって指導する際は、確実に骨盤底筋を収縮させていることを確認することが必要である。

****女性の腹圧性尿失禁に対する骨盤底筋訓練の有効性と同様に、男性腹圧性尿失禁に対しても骨盤底筋訓練の有効性が多数報告されています。しかし、前立腺全摘除術などで神経や括約筋がある程度損傷されている症例では、いくら骨盤底筋訓練を頑張って骨盤底筋群を運動させても肝心の尿道括約筋が収縮せず、骨盤底筋訓練の効果が現れにくい場合があるようです。

*****腹圧性尿失禁の治療の根幹は、骨盤底リハビリテーションと生活指導です。薬物療法や手術療法も、骨盤底リハビリテーションと生活指導というベースがなければ効果が上がりません。

【引用】
*泌尿器care& cure uro-lo  23(5):2018.10 p.554-562「腹圧性尿失禁の生活指導・薬物療法・理学療法」 女性医療クリニックLUNAグループ 関口 由紀
**日本医事新報  (4777):2015.11.14p.24-29「高齢女性の尿失禁: ベースとなる行動療法とケア 」獨協医科大学排泄機能センター 山西 友典
***日本母性衛生学会  56(1):2015.4 p.120-127 「日本における女性尿失禁患者に対する指導の実態」山口大学大学院 亀崎明子
****泌尿器ケア 18(4)、2013.4 p.416-420 「男性の腹圧性尿失禁とは?」東北大学病院 豊岡 藍
*****泌尿器care& cure uro-lo  23(5):2018.10 p.554-562「腹圧性尿失禁の生活指導・薬物療法・理学療法」 女性医療クリニックLUNAグループ 関口 由紀

カフェイン摂取減量により頻尿・尿意切迫感・尿失禁回数が有意に減少したが、ノンカフェイン飲料に変えても効果はなかった。という報告もある。

【引用】
日本医事新報  (4777):2015.11.14 p.24-29「高齢女性の尿失禁: ベースとなる行動療法とケア 」獨協医科大学排泄機能センター 山西 友典

体を締め付けるような矯正下着やガードル・コルセットなどの着用は勧められません。腹圧の上昇につながる衣服には注意が必要です。体を締め付けるような矯正下着やガードル・コルセットなどで腹部を極端に圧迫すると、腹圧の逃げ場がなくなり、骨盤底が圧迫され、さらなる悪化につながります。

【引用】
泌尿器care & cure uro-lo  23(5):2018.10 p.554-562「腹圧性尿失禁の生活指導・薬物療法・理学療法」 女性医療クリニックLUNAグループ 関口 由紀,

  • 腹圧性尿失禁は女性に圧倒的に多く、男性では腹圧性尿失禁が起きるのは、前立腺癌に対する前立腺全的術で尿道括約筋に損傷をきたした場合のように、比較的限られたケースです。【引用】ナーシングケアQ&A 12号 Page18-19(2006.08)「男性と女性とでは尿失禁に違いはあるのですか?」
  • 尿失禁は、男性は女性より少ないといわれている。これは解剖学的構造が男女で異なることにより男性では女性より尿を保持する力が強いことが原因と考えられている。しかし、近年の研究では男性でも無視でいないほどの症例に尿失禁が存在することが明らかになっている。【引用】 The Japanese journal of clinical and experimental medicine  88(10) 2011.10 p.1321~1324 「治療の実際男性尿失禁の現状について」東北大学大学院 中川晴夫
  • 前立腺肥大に伴う尿失禁では、切迫性尿失禁がほとんどであるが(前立腺手術後の尿失禁を除く)、発生頻度は少なく、報告もあまりみられない。【引用】Modern physician  32(12):2012.12 p.1508-1510「前立腺肥大症と関連症状: 過活動膀胱と尿失禁 」独協医科大学排泄機能せんたー布施美樹
  • 近年増加傾向にある前立腺癌の手術では尿道括約筋やその支配神経の損傷により腹圧性尿失禁が起こりやすく、前立腺全摘除術後1ヶ月で約半数の患者さんが尿失禁の状態です。術後6か月までにほぼ80%の患者さんで尿失禁は消失しますが、約2~3%では術後1年以降も重症の腹圧性尿失禁が継続すると報告されています。【引用】泌尿器ケア 18(4)、2013.4 p.416-420 「男性の腹圧性尿失禁とは?」東北大学病院 豊岡 藍