緑内障、高眼圧症患者の日常生活の注意点

40 歳以上の日本人における緑内障の有病率は 5.0% であり,推定患者数は 465 万人に上る.緑内障は進行性の疾患である。緑内障の管理を正しく行うためにも緑内障の進行に関わる要因を理解することは重要である。

*目を枕に当てて寝たり、腕の上に乗せて寝たりして目を圧迫するのは避けましょう。

**水中ゴーグルによる眼窩周囲の圧迫が一時的な眼圧上昇を引き起こすという報告があります。

【引用】
*米国眼科学会ホームページ(2020年)
**眼科ケア 2016 vol.18.No3 P233-238 「日常生活の注意点についての説明」 関東中央病院 眼科 斎藤瞳  

*頭を下にした姿勢は避けましょう。長時間頭を心臓より下に置かないようにしましょう。頭を下にした姿勢は、眼圧を大きく上昇させる可能性があります。重度の緑内障の人の中には、特定のヨガの体勢を避ける必要がある人もいます。

**眼圧は座位よりも仰臥位(仰向けに寝た姿勢)のほうが高く,さらに頭低位(胴体よりも頭の位置が低い姿勢)ではより高くなり,倒立位(逆立ちした姿勢)ではさらに高くなります

***通常のヨガで眼圧上昇はありませんが、倒立の体位を長時間保持するヨガのポーズでは、最大15~20mmHgも眼圧が上昇するといわれてています。

【引用】
*米国眼科学会ホームページ
**Frontiers in Glaucoma No.58, 68-75. 2019 
***眼科ケア 2016 vol.18.No3 P233-238 「日常生活の注意点についての説明」 関東中央病院 眼科 斎藤瞳        

*一度に500ml以上の水分を摂ると眼圧が上昇するのでご注意下さい。

【引用】
*大阪府眼科医会ホームページ

*緑内障患者は、喫煙が視神経の血液循環を悪くするとの報告がありますので、控えてください。

**現在、喫煙と緑内障の関連性は証明されていません。ほどほどにたしなむのは問題ないでしょう。

***喫煙者と過去に喫煙していた者は、喫煙したことがない者よりも平均眼圧が高い

【引用】
*参天製薬ホームページ
**東京医科大学病院 市民公開講座 丸山 勝彦
*** Ophthalmol Glaucoma. Jul-Aug 2020;3(4):253-261. title「Smoking Is Associated with Higher Intraocular Pressure Regardless of Glaucoma: A Retrospective Study of 12.5 Million Patients Using the Intelligent Research in Sight (IRIS®) Registry」

*肥満は眼圧上昇のリスク因子です。BMIの10増加ごとに、眼圧は、男性で0.9mmHg、女性で0.7mmHgそれぞれ上昇した。

**肥満の程度を示す指標であるBody Mass Index(BMI)が眼圧と有意な正の相関を示すことが報告されており、肥満は眼圧上昇に関連する。

【引用】
*J Glaucoma 2016 May;25(5):e509-13.「Relationship Between Body Mass Index and Intraocular Pressure in Men and Women: A Population-based Study」
*眼科グラフィック vol7 No6 2018 「緑内障の予防 Prevention and management of glaucoma」 東北大学院医学研究科 志賀由己浩

*血糖値が高いと眼圧が上昇する可能性が示唆される(血糖値が高いことで、眼の中を循環する水の出口が詰まりやすくなり、眼圧が上がる可能性が考えられる)

**AGIS試験やCNTGS試験(試験名の通称)では糖尿病は緑内障進行の有意な因子ではなかった。糖尿病と緑内障との関連は、近年の大規模な疫学調査でも結果に差があり、結論が出ていない。動物モデルでは、高血糖が緑内障性視神経症に悪い影響を与えることが証明されているものの、実臨床では血糖値に対する介入が入っていることが多く、糖尿病治療薬の影響も無視できないため、結果が一定していないと考えられる。


【引用】
*Sci Rep 2020 Mar 24;10(1):5355.「Relationships of diabetes and hyperglycaemia with intraocular pressure in a Japanese population: the JPHC-NEXT Eye Study」
*緑内障診療ガイドライン(第4版) 
**MB OCULL No87 P53-60 2020 「緑内障の進行危険因子を知り、治療に活かす」 熊本大学大学院 井上俊洋                 

*40歳以上は眼圧上昇を引き起こす患者が多い。

**高齢は緑内障進行においても有意な危険因子である

***緑内障診断時、高齢であるほど緑内障が進行しやすいことが、いくつかのランダム比較試験で示されている。狭義の原発開放隅角緑内障では、ベースライン(診断時)の年齢を進行の予測因子として良いが、正常眼圧緑内障では当てはまらない可能性が高い。

****加齢と眼圧との関連は報告によっても異なっており、見解は一致していない。我が国における調査でも、加齢が眼圧上昇と関連する成績と眼圧低下と関連する成績があり、一致していない。

【引用】
*緑内障と眼の病気~患者さん、介護者、医療従事者の手引き~2006年
**「正常眼圧緑内障患者における眼圧動態と視野進行の関与因子の検討」坂田礼 2017-10-18
***MB OCULL No87 P53-60 2020 「緑内障の進行危険因子を知り、治療に活かす」 熊本大学大学院 井上俊洋
****眼科 59(6):2017.6 p.611-618 「疫学調査における緑内障の非眼圧的要素」 九州大学大学院  藤原 康太

*夜間血圧の極端な低下がリスクとなる。昼間と比較した夜間の収縮期血圧と拡張期血圧の>20%の低下(extreme dipper)が、緑内障性障害の有意なリスク因子であることが認められた。

**若い患者では高血圧は眼血流に防御的に働くが、高齢患者では高血圧による視神経乳頭の血流低下が自動調節能を下回り、より眼血流の低下を呈し、緑内障のリスクの一因となる。睡眠時の血圧が日中よりも10mmHg以上低下するヒトは、正常眼圧緑内障の進行を認めることが明らかになっている。

【引用】
*Ophthalmology  2018 Jun;125(6):807-814.「Glaucomatous Optic Neuropathy Associated with Nocturnal Dip in Blood Pressure: Findings from the Maracaibo Aging Study」
**Mb OCULL No87 P30-37 2020 「緑内障と関連する全身疾患」 東北大学大学院 檜森 紀子

*睡眠時無呼吸症候群は緑内障悪化の危険因子である。

**緑内障と睡眠時無呼吸症候群の関連を示唆する多くの報告があり、睡眠時無呼吸症候群患者の2~27%が緑内障有病者ということが明らかになっている。また、既報では緑内障患者において睡眠時無呼吸症候群の割合は20~57%という報告もある。

***開放隅角緑内障患者における睡眠時無呼吸症候群合併の有無で眼圧を検討した結果、睡眠時無呼吸症候群合併群で有意に眼圧が低値であるという報告がある。睡眠時無呼吸症候群が解放隅角緑内障に与える影響は眼圧を介した機械的影響ではなく、夜間睡眠中の無呼吸に起因する虚血・再灌流障害に起因することが推測される。眼圧コントロールが良好になされているにも関わらず視野障害進行が抑制できない症例に関しては睡眠時無呼吸症候群を含めた背景因子の存在を疑う必要がある。

【引用】
*米国眼科学会ホームページ(2020年)
**Oculista (87):2020.6 p.30-37 「緑内障と関連する全身疾患」 東北大学大学院 檜森紀子
***眼科 59(6):2017.6 p.581-588「眠時無呼吸症候群と緑内障」大森病院眼科柴友明

日差しから目を守ってください。紫外線が緑内障の発症に関与するのではという研究報告があります。外出時には紫外線カットのサングラスや帽子を。

【引用】米国眼科学会ホームページ(2020年)

*ブルーベリーに含まれるアントシアニンが目によいといわれていますが、実はこれは非常に科学的根拠の低い論文によって提唱されはじめた通説です。現在ブルーベリーの摂取による現実的な眼疾患の改善はないとされています。

【引用】*眼科ケア 2016 vol.18.No3 P233-238 「日常生活の注意点についての説明」 関東中央病院 眼科 斎藤瞳

*ジョギング、エアロビクスなどの有酸素運動では2~5mmHg程度の眼圧下降が報告されている。運動による眼圧下降の理由はまだわかっていませんが、運動による血中乳酸濃度の上昇に伴うpH変化やホルモン変化、脱水による影響などが関係していると推測されています。ただ、残念ながら運動による眼圧下降効果は一時的なものであり、1~2時間で元の眼圧に戻ってしまいます。

**ランニング、ウォーキングなどの有酸素運動は眼圧を下げることが知られているが、眼圧の下降幅は運動強度と比例すると言われている。エアロビクスを12週間行うと、平均眼圧が4.6mHg下降するとの報告もある。また、健常人よりも緑内障患者では眼圧下降幅が大きいと言われている。

【引用】
*眼科ケア 2016 vol.18.No3 P233-238 「日常生活の注意点についての説明」 関東中央病院 眼科 斎藤瞳
**眼科グラフィック 2018 vol.7 No6 P682-689 「緑内障の予防Prevention and management of glaucoma」 東北大学院医学研究科 志賀由己浩

*吹奏楽器の演奏は強い呼気による静脈還流圧上昇が起きるため、眼圧上昇の原因となることがわかっています。トランペット演奏前に20mmHgだった眼圧が40mmHgまで上昇したとの報告もあり、演奏中の眼圧上昇率は比較的高いと考えられます。ただし、演奏終了後には眼圧は元の数値に戻っています。眼圧上昇のリスクが高い楽器としてはトランペット、オーボエ、バスーン(ファゴット)、フレンチホルンなどがあげられます。

【引用】*眼科ケア 2016 vol.18.No3 P233-238 「日常生活の注意点についての説明」 関東中央病院 眼科 斎藤瞳

*現在のところ緑内障進行の予防のためにマルチビタミンをはじめとする抗酸化物質を患者に勧めるほどのエビデンスはない。

**全身の酸化ストレスが視神経乳頭の血流低下を介して緑内障病態に関与している可能性が示唆されており、男性は女性よりも酸化ストレスの障害が強いことが報告されている。正常眼圧緑内障患者は眼疾患のない対照群と比較して、血清中ビタミンC濃度が有意に低値であったという結果が報告されている。

***正常眼圧緑内障を対象にイチョウ葉エキス内服120mg/日を4週間投与した試験では、視野感度が上昇した(PMID:12578781)。緑内障を対象にビタミンE内服300又は600mg/日を12カ月投与した試験では、眼動脈血流上昇、後毛様動脈血流上昇、視野感度低下抑制した(PMID:17671926)。正常眼圧緑内障を対象にイチョウ葉エキス内服160mg/日を4週間投与した試験では、乳頭周囲血流増加がみられた(PMID: 21976939)。原発開放隅角緑内障を対象にビタミンC・E、銅、亜鉛、マンガン、ルテイン、n-3系脂肪酸内服を2年間投与した試験では、対照群と差が認められなかった(PMID: 25545196)。これらの報告も含めて、抗酸化治療に関する緑内障治療として強力なエビデンスは存在しない。

【引用】
*眼科 59(6):2017.6 p.589-594 慶應義塾大学医学部 結城 賢弥
**あたらしい眼科 35(6) p.761-767 2018「緑内障におけるサプリメント治療の可能性」東北大学大学院 檜森紀子
***Oculista  (51) p.19-26 2017 「緑内障と酸化ストレス」 松江赤十字病院眼科 谷戸正樹

コーヒーを飲むと眼圧が上昇するという報告がありますが、優位な眼圧上昇はないとする研究もあります。コーヒーで眼圧が上がる原因としては、カフェインによる房水産生増加や房水流出抵抗の上昇などが挙げられています。ただし、これらの要因は動物実験では否定的なデータも出ており、因果関係ははっきりしません。

【引用】
眼科ケア 18(3)  p.233-238 2016 「日常生活の注意点についての説明」 関東中央病院眼科齋藤瞳