寒くないのに、歯がガクガク震える!?

寒くないのに歯がカクカク震える(歯がカチカチ小刻みに動く)のは、あごの震え(振戦)かもしれません(下顎振戦)。該当する医学文献報告を以下に抜粋します。

報告する症例は、顎関節病変由来と思われる下顎部振戦の一例である。顎関節習慣性脱臼に対する手術後まもなく顎部振戦と関節痛が生ずる。就寝時には停止または軽減する。舌、口唇には振戦を認めない。本症例の病因は下顎頭の偏位による関節包の異常な求心性インパルスに関連すると思う。

【引用】日本口腔科学会雑誌 「下顎部振戦の一例」 39(3) 821 1990年  岡 達

下顎の間欠的な振戦および痙攣が起こるようになり、さらに開口障害を自覚するにいたり、近所の歯科を受診した。本症例は、長期間の歯牙欠損状態での咬合により顎運動の異常が続き、いわゆる顎関節症の発症をきたしていたものであるが、さらに心理的要因と、上下顎対合歯の喪失に伴う咬合高径の急変により、きわめて重症な顎の振戦、痙攣を誘発していったものと考えらえれる。

【引用】歯界展望  「下顎の著明な振戦・痙攣を伴う特異な顎関節症」 巻:63 号:1  ページ:81-88 1984年 作田正義

双極性障害の患者において躁状態の消退と交替するよに下顎振戦の出現をみた。本症例に出現した下顎の振戦は、舌の運動を伴わない安静時振戦であり、極期に両手指に軽微な振戦を伴ったほかは下顎以外の部位に目立った振戦や固縮を認めなかった。またこの下顎振戦はtiaprideは無効、biperidenはある程度有効で、sultropride投与中止により速やかに消失したことからも、薬物性のパーキンソン振戦と考えられる。本症例の場合、薬物による錐体外路症状として下顎部に振戦が出現しやすいものと推測される。

【引用】 精神科治療学 「躁状態の改善に一致して薬物性の下顎振戦の増悪を示した1例」 8(5) 577-582  1993年 坂上紀幸

口部にのみに限局した振戦が出現することは稀である。通常は、パーキンソン病や本態性振戦などの全身性振戦疾患の部分症状としてみられる。我々は、口顎が規則正しく震えるようになった、特発性口顎部振戦を呈した患者を経験した。ラビット症候群は、口周囲の異常運動をウサギが食べ物を噛む口の動きにたとえて命名された。定義上は薬原性運動障害であるが、薬原性でない類似の不随運動に対しても使われるようになってているので、本症例はラビット症候群と診断した

【引用】 脳と神経 「特発性ラビット症候群」巻: 51  号: 10  ページ: 907-909  発行年: 1999年10月01日 三輪英人

Rabbit症候群の不随運動は、長期間(ほとんどは数カ月から数年)の抗精神病薬治療の後に発現する。Rabbit症候群の有病率は、定型抗精神病薬治療を受ける者のうち2.3~4.4%と報告されている。Rabbit症候群は口部ジスキネジアと誤診されることが最も多い。口部ジスキネジアでは舌の動作を含むが、rabbit症候群では見られない。口唇の動きについて、rabbit症候群では垂直方向のみで細かい動きだが、遅発性ジスキネジアではあらゆる方向に動く上にゆっくりと不規則である。ラビット症候群の特記すべき点は、口唇部のみに出現するという特異性にある。

【引用】精神科治療学 「精神科治療薬の副作用:予防・早期発見・治療ガイドライン 第I章 症状の臓器ごとの副作用 1.中枢神経系 2)神経症状:2 錐体外路症状(5)Rabbit症候群」
巻: 22  号: 増刊号  ページ: 48-49  発行年: 2007年11月29日

補足:【ラビット症候群(rabbit syndrome)】:特殊な錐体外路症状

ラビット症候群は、抗精神病薬の投与中にみられる口部の運動障害のひとつである。抗精神病薬の投与中に出現した口周囲の振戦として1972年にVilleneuveによって初めて報告され、ウサギが食物をかんでいるときの口の動きに似ていることからその名が付けられた。ジストニア、ジスキネジアとの異同がときに問題とされてきた。ラビット症候群は、①他のパーキンソンニズムを伴うことが多い。②睡眠深度に応じた変化が静止時振戦に類似したという報告がある。③抗コリン薬が有効で治療反応性はパーキンソンニズムに合致する。といった特徴を有しており、以上のことから筆者はラビット症候群をパーキンソンイズムとしてとらえるのが妥当と考える。一方で、薬剤性パーキンソンニズムから遅発性ジスキネジアへの移行型とする見方もある。

【引用】 精神科治療学「気づきにくい向精神薬の副作用 抗精神病薬による錐体外路症状」巻: 34  号: 5  ページ: 489-494  発行年: 2019年05月19日