気管支喘息患者の日常生活の注意点

喘息にはアトピー型と非アトピー型の喘息があります。アトピー型はアレルギー反応を起こす物質が特定でき、その物質が引き金となって炎症が起こします。非アトピー型は、原因となる物質が特定できず、様々な物質の刺激によって炎症が引きこされます。大人の喘息の6割がアトピー型、子供の約9割がアトピー型です。

*喘息発作の原因アレルゲンとして最も重要なのは家塵中のダニである。床の掃除機がけはできるだけ毎日行うことが望ましい。また、1週間に1回はシーツを外して寝具両面に直接掃除機をかけ、布団カバーやシーツをこまめに替えるようにする。

**床はホコリを取り除きやすいフローリングが望ましく、カーペットや布製ソファーの使用、ぬいぐるみはできるだけ避けます。床の掃除機かけは、できるだけ毎日行い、3日に1回は1m×1mあたり20秒の時間をかけます。畳の場合は、畳と寝具はダニの相互汚染を起こすので、特に掃除機がけが必要です。ベッドに替える工夫もよいでしょう。室内には、不要な家具類は置かないように整理し、ホコリがたまることを防ぎます。寝具類はダニが通過ができない高密度繊維のカバー、シーツで覆うのが効果的といわれています。これができない場合は1週間に1回、カバーを外して寝具の両面にていねいに掃除機をかけます。枕は洗える素材のものを使用して、ときどき洗濯し、よく乾燥させます。殺ダニ剤の使用は原則的にお勧めしません。

***ダニは温度20℃前後、湿度70~80%の環境を好みます。天気のよい日は窓を開けて、室内の換気をすることも大切です。押し入れや洋服ダンスの中にも、扇風機で風を送るなどして、湿気がこもらないようにします。また、浴室や洗面所、台所の換気は頻繁にし、カビを防ぎます。布団などは午前中に干して、午後2時ごろまでに取り込みます。梅雨の時期などは、ふとん乾燥機を使ってもよいでしょう。

****ダニが家の中でどんな場所に多いかについて調査によれば、家の中で最も多かったのが布製のソファと食卓の椅子、次がぬいぐるみでした。

*****加湿器の使い過ぎはダニやカビを増やす原因となります。ダニは湿度80%以上で活発化します。就寝時に加湿器を一晩中稼働させるのは、もってのほかです。温湿計を見ながら、就寝前に2時間ほど稼働させる程度に控えましょう。

******床や家具の掃除、寝具の管理によるダニの減量が勧められる:エビデンスレベルB

マットレスや枕のカバーはダニ対策の方法の違いにより効果が一定しない:エビデンスレベルB

ダニと他の複数の危険因子を回避する包括的な対策が有用である:エビデンスレベルB

【*引用】調剤と情報 2009 1月号 vol15 58-62
【**引用】書籍 ケアに役立つ喘息の最新知識 2003
【***引用】トップ専門医の「家庭の医学」シリーズ スーパー図解ぜんそく  2006
【****引用】集英社 健康百科 危ない現代病30 気になるぜん息アレルギー 2005
【*****引用】サノフィe-MR ホームページ 知っておきたいアレルギーCURE
【******引用】喘息予防・管理ガイドライン2018年
エビデンスレベルA:大規模無作為化比較試験
エビデンスレベルB:小規模無作為化比較試験
エビデンスレベルC:非無作為化比較試験,観察研究
エビデンスレベルD:パネルコンセンサスの総意

*猫や犬、ハムスターといったペットの毛やフケがアレルゲンとなり、喘息を引き起こすことがあるため、ペットは外で飼育するか、できれば飼わないようにする。

**猫は3年以上飼っていると、アレルギー体質の人の約半数がその猫に感作するといわれています(アレルギー症状を引き起こす)。

***ペットアレルゲン除去の臨床効果には長期間を要する:エビデンスレベルB

【引用】調剤と情報 2009 1月号 vol15 58-62
【**引用】トップ専門医の「家庭の医学」シリーズ スーパー図解ぜんそく  2006
【***引用】喘息予防・管理ガイドライン2018年
エビデンスレベルA:大規模無作為化比較試験
エビデンスレベルB:小規模無作為化比較試験
エビデンスレベルC:非無作為化比較試験,観察研究
エビデンスレベルD:パネルコンセンサスの総意

*飲酒により血中のアセトアルデヒド濃度が上昇し、ヒスタミン遊離を介して喘息症状を悪化させる。日本人の喘息患者の約半数は飲酒により喘息症状の増悪を来すため、控えるよう指導する。

**アルコールは原則禁止。アルコールによって誘発される喘息を「アルコール誘発性ぜんそく」と呼ばれ、日本人の喘息患者は、欧米人に比べてアルコール誘発喘息を起こしやすいと言われています。日本人の約半数は、アセトアルデヒドを分解する酵素が不活発なため、アセトアルデヒドの害を受けやすいです。アルコールそのものがアレルゲンとなり、ほぅさを誘発するこもまれですがあります。冷たいビールの一気飲みが気道の粘膜を刺激したり、飲んだ後に冷たい夜風にあたることが発作の原因になることもあります。一般には約6割の患者がアルコールで喘息症状の悪化をみるといわれています。

***アルコールで喘息発作が誘発される患者では、飲酒およびアルコール含有飲食物を除去する必要がある:エビデンスレベルB

【*引用】調剤と情報 2009 1月号 vol15 58-62
【**引用】トップ専門医の「家庭の医学」シリーズ スーパー図解 ぜんそく 2006年
【***引用】喘息予防・管理ガイドライン2018年
エビデンスレベルA:大規模無作為化比較試験
エビデンスレベルB:小規模無作為化比較試験
エビデンスレベルC:非無作為化比較試験,観察研究
エビデンスレベルD:パネルコンセンサスの総意

*ストレスも喘息の増悪因子であることが知られている。ストレス解消を心掛ける。

**過労やストレスも症状の悪化につながります。対策は、睡眠や休養を十分に取ることで、場合によっては仕事への配慮も必要となります。

【引用】調剤と情報 2009 1月号 vol15 58-62
【**引用】書籍 ケアに役立つ喘息の最新知識 2003

*仕事場のアレルゲンに注意ください。特定の職業に関連して喘息が起こることがあり、これを「職業性ぜんそく」といいます。

・生花業(花粉喘息)

・シイタケ栽培業(シイタケ胞子喘息)

・製材業(ラワン喘息、アメリカスギ喘息)

・お菓子屋、製粉業、製麺業(小麦粉喘息)

・果実栽培業(イチゴなどの果実がなる食物の花粉)

・獣医(動物の毛、羽、アカ、フン)

・薬剤師(粉の薬剤)

・美容師・理容師(化粧品、パーマ)

・エステティシャン(オイル)

**職場環境における刺激物質暴露による増悪も常に念頭に置き、増悪因子を早期に同定し、患者をその因子から遠ざけることが職業性喘息に対する最も重要な対策である:エビデンスレベルB

【*引用】法研 ビジュアル版 自分で治す ぜんそく 2009年
【**引用】喘息予防・管理ガイドライン2018年
エビデンスレベルA:大規模無作為化比較試験
エビデンスレベルB:小規模無作為化比較試験
エビデンスレベルC:非無作為化比較試験,観察研究
エビデンスレベルD:パネルコンセンサスの総意

*タバコの煙は気道の刺激になるだけでなく、喘息のもとである炎症を悪化させます。また、喫煙を続けると喘息の基本治療薬である吸入ステロイド薬の効きが悪くなることも分かっています。

**喘息患者は自身の禁煙のみならず受動喫煙の回避にも努めるべきである:エビデンスレベルC

喘息児の両親が喫煙者の場合は禁煙プログラムを指導することが望ましい:エビデンスレベルB

【*引用】アストラゼネガ株式会社 ホームページ
【**引用】喘息予防・管理ガイドライン2018年
エビデンスレベルA:大規模無作為化比較試験
エビデンスレベルB:小規模無作為化比較試験
エビデンスレベルC:非無作為化比較試験,観察研究
エビデンスレベルD:パネルコンセンサスの総意

*線香や花火などの煙や、化粧品・ヘアスプレー・接着剤などの強い匂い、霧・入浴中の湯気などで喘息発作が誘発されることがある。

**殺虫剤や消臭剤のスプレー、香水やマニュキュア、除光液の臭い、焚火の煙、自動車の排気ガスなどが発作を引き起こすことがあります。

***ディーゼルエンジンの排気物質を含む大気汚染が、既存のアレルギー性炎症を増悪させる可能性が示唆されている。PM2.5はその粒子径の小ささにより下気道まで到達しやすく、喘息増悪因子として報告されている。粉塵の飛散や自動車・工場などからの排気物質濃度が高い場合は、屋内にとどまるなどの工夫が望ましい。

【*引用】調剤と情報 2009 1月号 vol15 58-62
【**引用】法研 ビジュアル版 自分で治す ぜんそく 2009年
【***引用】喘息予防・管理ガイドライン2018年

*比較的激しい運動を3~8分間することで喘息発作や気管支収縮が起こりやすい。ランニング、特に短距離走の繰り返しや中距離走で起きやすい。水泳では起こりにくい。

**運動をきっかけに発作を起こすものを「運動誘発喘息」といいます。急に激しい運動をしたときや、寒い屋外で運動して、冷たい空気を吸い込んだ時などに起こりやすい。短距離走のような無酸素運動よりも、軽いウォーキングやジョギングのような有酸素運動の方が発作を起こしにくいとされています。サッカーなどのチーム競技よりも、自分でペースをコントロールできる個人競技の方が向いているといえます。室内でのマット運動などは、ホコリを吸い込みやすいので、あまり向いていません。喘息患者に最適といわれているのが「水泳」です。水泳は自分のペースで泳げる有酸素運動で、プールは温度や湿度が比較的高く、気道内の冷却や乾燥を防いでくれます。

***気温が低い時、風が強い時、湿度が低く乾燥している時などは冷たい空気を吸い込み、発作を起こしやすくなります。マスクをつければほぼ防ぐことができますが、秋から冬にかけての早朝の運動は控えたほうがよいでしょう。

****喘息患者の多くは運動終了の数分後から一過性の気管支収縮を来して60分以内に自然回復する。これは気道内の温度の急激な変化および気道の水分喪失に伴う浸透圧上昇が刺激となり、各種炎症性メディエーターーが遊離され気道収縮が引き起こされると推察されている。運動前のウォーミングアップが効果的で推奨されている。運動時のマスクの着用、加湿も効果的である。運動誘発喘息は水泳で生じにくく、ランニング、特に短距離走の繰り返しや中距離走で生じやすい。

【*引用】調剤と情報 2009 1月号 vol15 58-62
【**引用】トップ専門医の「家庭の医学」シリーズ スーパー図解ぜんそく  2006
【***引用】ぜんそく 正しい治療がわかる本 昭和大学医学部内科学 足立満 2010年
【****引用】喘息予防・管理ガイドライン2018年

前日と比較して平均気温が3℃以上低下した日に喘息発作が起きやすく、秋・春の季節の変わり目に多い。秋や春には服装による調節を心掛け、冬や夏は冷暖房による室内の温度に十分配慮する。

**喘息の発作と気象の変化の関係は古くから指摘されています。9月から11月にかけて発作の頻度が高くなります。原因は夏に繁殖したダニが秋になって死ダニとなり、これが砕け散って微粒子になり、吸入されやすくなります。また秋は気温の変動が激しく、台風が来襲するなど天候が不安定になりがちです。

***気温が下がってくると、呼吸により吸い込まれる冷気が原因で、気道の収縮が起こります。喘息患者はこの冷気に対して敏感に反応し、気道を一気に収縮させてしまうため、発作が誘発される。前の日から(または1日の間で)気温が10度以上変わる秋や、最低気温が5度以下になる冬に発作が起こりやすくなるといわれています。

****気温や気圧の変化、雷雨、黄砂なども喘息増悪の原因となることから、コントロール不良の喘息患者に対しては、気象予報などを参考にして外出をなるべく控えるように指導する。

【*引用】調剤と情報 2009 1月号 vol15 58-62
【**引用】トップ専門医の「家庭の医学」シリーズ スーパー図解ぜんそく  2006
【***引用】ビジュアル版 自分で治す ぜんそく 2009年
【****引用】喘息予防・管理ガイドライン2018年

*喘息患者は、食べてはいけない食品はありませんが、山芋、里芋、たけのこ、なす、ほうれんそうなどは、ヒスタミンやコリンなどといった気管支粘膜を刺激し、収縮させる成分が含まれています。適量ならば全く問題ありませんが、体調の悪い時にたくさん食べすぎると、発作を引き起こすことがあるので注意してください。そのほか、一般に香辛料の強く効いた食べ物は発作を誘発しやすいので、避けるようにするとよいでしょう。

小児喘息、特に乳幼児の喘息は、食物アレルゲンが関与している場合が多い。小児の食物アレルゲンとして多いのは、卵、牛乳、大豆、米、小麦、そば、肉、魚などです。成人喘息で食物がアレルゲンとなることは少ないですが、比較的よくみられるのは、そばと小麦粉のアレルギーです。

**気道に刺激を与えやすい食品として、冷たいアイスクリームや炭酸飲料、熱い麺類、カレー粉や唐辛子などの香辛料があります。摂りすぎや食べ方に気を付けましょう。

***喘息の管理には植物性食品を主体とした食事である「プラントベース食」が有用な一方で、乳製品や高脂質の食品は喘息リスクを高める可能性が示された。野菜・果物の摂取は喘息リスクの低下および喘息コントロールの改善と関連しており、乳製品の摂取は喘息の発症や症状悪化につながる可能性が示された。

****血清ビタミンDの低下が喘息の増悪と関係するとの報告もある。

【*引用】トップ専門医の「家庭の医学」シリーズ スーパー図解ぜんそく  2006
【**引用】ぜんそく 正しい治療がわかる本 昭和大学医学部内科学 足立満 2010年
【***】The Role of Nutrition in Asthma Prevention and Treatment_Nutr Rev. 2020 Mar 13【PMID: 32167552】
【****引用】喘息予防・管理ガイドライン2018年

*気道の感染は大敵です。風邪やインフルエンザに感染すると、気道の粘膜が炎症を起こし、過敏性が高まります。そのためわずかな刺激にも反応して、気道が収縮して発作がおこりやすくなります。

**中等症以上の喘息患者では流行時の接種が勧められる。我が国において冬季に実施されるインフルエンザワクチン接種は喘息増悪の予防効果がある:エビデンスレベルC

ただし、3歳未満の喘息児への不活化ワクチンの経鼻投与は逆に喘息を増悪させるとの報告もある。肺炎球菌ワクチンの喘息増悪に対する抑制効果については一定の見解が得られていない。

【*引用】トップ専門医の「家庭の医学」シリーズ スーパー図解ぜんそく  2006
【**引用】喘息予防・管理ガイドライン2018年
エビデンスレベルA:大規模無作為化比較試験
エビデンスレベルB:小規模無作為化比較試験
エビデンスレベルC:非無作為化比較試験,観察研究
エビデンスレベルD:パネルコンセンサスの総意

*気管支と鼻は一見、無関係にも思えますが、ひと続きの空気の通り道としてつながっており、ぜん息とアレルギー性鼻炎には関連があることが分かってきています。ぜん息患者さんの67%にアレルギー性鼻炎が合併しており、ぜん息の病状や発症にも影響するという報告もあります1)。花粉症を合併するぜん息患者さんでは、花粉症シーズンにぜん息の症状が悪化することが知られており2)、鼻で起きたアレルギー性の炎症が気道の炎症に悪影響を及ぼしている可能性が考えられています。このような関連から、ぜん息とアレルギー性鼻炎は同時に治療を行い、相互に悪化させないことが大切です。

**アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎の治療は喘息の病態を改善させる:エビデンスレベルB

アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎は、気道過敏性の亢進や気道閉塞の存在と関連する。

【*引用】サノフィe-MR ホームページ 知っておきたいアレルギーCURE
【**引用】喘息予防・管理ガイドライン2018年
エビデンスレベルA:大規模無作為化比較試験
エビデンスレベルB:小規模無作為化比較試験
エビデンスレベルC:非無作為化比較試験,観察研究
エビデンスレベルD:パネルコンセンサスの総意

【患者向けサイト】

アストラゼネガ株式会社 「ぜん息外来.jp