製薬会社の学術(DIセンター)への問い合わせマナー編

薬剤師なら1度は製薬会社の学術に電話で問い合わせをしたことがあるのではないでしょうか。問い合わせ理由は色々あるかもしれませんが、製薬会社の立場(スタンス)がありますので、それを理解したうえで、問い合わせをするとよいと思います。

【錠剤の粉砕可否の問い合わせ】

A薬は粉砕できますか?

申し訳ございませんが、A薬の粉砕したデータがございません。

え!データがない状態でよく承認とれましたね!?

【粉砕についての注意点】

粉砕は薬剤師の業務の中で、当たり前のように行われていますが、添付文書の用法用量に粉砕してもよいという記載がないため、製薬会社にとっては承認外の使用方法という扱いになります。

①新薬は粉砕の安定性についてのデータを承認前に得ているケースが多くなっています。最近は病院で採用する際に粉砕の安定性データが必須のケースもあり、製薬会社もやむを得ず粉砕データを収集しているケースがあります。新薬で粉砕データがない場合、薬剤師からの要望が多ければデータを取るケースもあるでしょう。

②古い薬剤は粉砕データをとっている薬剤の方が少ないです。古い薬剤は今から粉砕の安定性データを取る可能性はほぼありません。製薬会社が安価の古い薬剤の粉砕の安定性データをとってもメリットがほとんどないからです(粉砕データがないことで安価の古い薬剤を病院で採用されなくてもあまり痛手になりませんので)

③粉砕後の安定性データが良い結果でも、製薬会社が粉砕しても大丈夫という回答はしません。粉砕後の体内動態を検討したデータは製薬会社ではデータを基本的にとりませんので、ほとんどの薬でデータがありません。粉砕後の安定性データがない場合は、原薬の安定性データおよびフィルムコート錠かどうかなどの情報から製薬会社ではなく、薬剤師自身で粉砕するかどうかを判断する必要があります。

【副作用の件数確認の問い合わせ】

A薬で腎機能障害の副作用の件数は?

インタビューフォームでは承認時に「腎機能障害」という報告名で3件、市販後の当局報告で「腎機能障害」が6件、報告されています。

【副作用についての問い合わせポイント】

確認したい内容を絞りましょう

①報告があるかないか(件数)が知りたいのか

製薬会社にもよりますが、副作用の件数は基本的に、インタビューフォームおよび市販後の当局報告件数(重篤症例のみ)からの回答になると思われます。新薬の場合は、市販直後調査の途中経過のデータの集計データから案内してもらえるケースもあるでしょう。

②報告されている頻度(%)を知りたいのか

基本的にインタビューフォームからのみの案内になります。市販直後調査の途中経過のデータの集計データも案内してもらえるケースもあるでしょう。

③報告されている副作用の詳細な経過(対症療法など)を知りたいのか

市販後の当局報告(重篤症例のみ)データの中に詳細な情報あれば案内してもらえるでしょう。詳細なデータがないケースも多く、あまり期待しないほうがよいと思います。

①②「副作用の件数」「副作用の頻度」について、製薬会社から満足のいく回答が得られなかった場合

米国添付文書の確認

●欧州添付文書の確認

●リスク医薬品計画の確認

●承認審査報告書、申請資料概要の確認

●文献を検索

③「副作用詳細」について、製薬会社から満足のいく回答が得られなかった場合

●使用上注意の改訂の確認

●承認審査報告書、申請資料概要の確認

●文献を検索

製薬会社では、多くの問い合わせがあるため、限られた時間の中で、誰でも同じ回答になるように、回答に用いる資料の範囲が基本的に存在しています。そのため、あらゆる資料を検索して案内するということはできません。製薬会社の学術をうまく利用して、足りない部分は自分自身で調査するとよいでしょう。


【手術の休薬期間に関する問い合わせ】

A薬使っている患者が手術することになったが、A薬は休薬したほうがよいのか。

添付文書で手術による休薬の設定はなく、弊社から休薬はお勧めはしておりません。

薬剤との因果関係にかかわらず、A薬服用後に好ましくない事象が起こった場合は、患者さんの情報を収集しておりまして、MRが訪問して情報収集させていただけますか?

はい?手術は薬とは関係ないですけど。副作用ではありませんが?

製薬会社は有害事象の調査をしたいが、薬剤師に理解されにくい有害事象が

「入院」「手術」「患者が最近錠剤が飲みにくいらしい」「原疾患の悪化」です。

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・薬を服用する前から予定されていた「入院」「手術」は有害事象としての調査は必要ありませんが、薬を服用した後に原疾患・合併症が悪化して「入院/手術」をした場合は、有害事象として調査するケースがあります。

・「最近錠剤が飲みにくい」は嚥下障害、全身状態悪化の可能性もあるため、調査対象となるケースがあります。

厚労省からの通知に以下のような記載があります。送信者(製薬会社を指す)およびすべての報告者(薬剤師や医師)が「因果関係を否定できる」と判断したもの以外は報告することとあります。

つまり、薬剤師が副作用ではないと判断しても、製薬会社が副作用かもしれないと判断した有害事象は、製薬会社が当局にその有害事象を報告しなければならないケースがあるということを意味しています。そのため製薬会社は副作用の調査をしたがるわけです(通常「副作用」を否定するには、否定するだけの根拠が必要です。製薬会社として副作用ではないと判断できる明確な根拠がない場合は因果関係が否定できない、つまり「副作用である」という扱いになります)

【他社医薬品との違いに関する問い合わせ】

御社のA薬と他社B薬の違いは?

添付文書の記載では、A薬は1日1回ですが、他社薬は1日3回です。その他、添付文書では・・・が違います。

それだけ?

製薬会社の学術(DIセンター)は基本的には適正使用を推進するための窓口となります。製品のプロモーションをする窓口ではないため、他社薬との違いを案内する行為は、他社薬を誹謗中傷につながるため(他社薬の悪い部分を案内することにつながるため)他社薬については悪いことは案内しない方向性、つまり、無難な内容である添付文書の違いを案内する程度の回答になる可能性が高いです(臨床試験で直接比較していれば案内可能ですが)。他社薬との違いは、MRなどに相談するが良いと思います。