薬の副作用(有害事象)の因果関係評価の方法

医師などの医療関係者→製薬会社→医薬品医療機器総合機構の順番で副作用報告は一般的に行われていますが(別の経路もあります)、副作用は医師、製薬会社、機構すべてが「薬との関連性」を評価しています(薬との関連あり、関連なし、評価不能など)。患者を診察していない製薬会社がどうやって副作用の因果関係を評価するの?と疑問に思う人もいると思いますが、その評価をするためにMRが医師のところを訪問して副作用に関する情報収集をしています。

*有害事象と副作用の用語は正確には意味が異なりますが、このページでは使い分ける必要があまりないため混合して使用しています。

古いデータですが、製薬会社の評価アルゴリズム(スケール)は2007年の報告では武田方式(4企業)、FDA方式(3企業)、トロント方式(2企業)となっています。医薬品機構の評価アルゴリズムは非公表で独自のアルゴリズムを用いて評価しています。

【トロント方式(naranjoスケール)】副作用の因果関係を評価するスケールとして有名なものがnaranjoスケールです。10項目の比較的簡単な設問から評価するもので1981年naranjoらよってpublishされたものですが、今でも使用されています。

はいいいえ不明
①過去に、この有害反応について確定報告(conclusive)がすでに存在しますか?(有害反応は、既知事象か?未知事象か?)+1点0点0点
②有害反応は、被疑薬が投与された後に出現したものか?+2点-1点0点
③有害反応は、被疑薬を投与中止後に改善しましたか?または特異的拮抗薬を投与した後に改善しましたか?(デチャレンジ)+1点0点0点
④被疑薬を再投与した後に、その有害反応は再度発現しましたか?(リチャレンジ)+2点-1点0点
⑤被疑薬以外の原因はありますか?-1点+2点0点
⑥プラセボを投与した時、その有害反応は再度発現しましたか?-1点+1点0点
⑦被疑薬は血液中から、毒性濃度として知られている濃度で検出されましたか?+1点0点0点
⑧有害反応は、増量した時により強く現われた、または減量した時に弱くなった、ということはありますか?(用量依存的か?)+1点0点0点
⑨その患者は、過去にその薬物または類似薬投与時に、同じような症状を呈したことがありますか?(副作用歴の有無)+1点0点0点
⑩その有害反応は、客観的なエビデンスによって確定されたものですか?+1点0点0点

上記表の合計点から、薬物有害反応の確からしさは、≧9点:(明らか:definite)、5~8点:かなり確か(probable)、1~4点:あり得る(possible)、≦0点:疑わしい(doubtful)

【WHO スケール】因果関係を6段階に分けて評価する。主観的な評価となるためWHOスケールに対して批判的な意見もある。

https://www.who.int/medicines/areas/quality_safety/safety_efficacy/WHOcausality_assessment.pdf
確実に関連あり(certain)・薬剤投与と有害事象or臨床検査異常との時間的関連性に妥当性がある(plausible)
・有害事象が患者の病態or他剤によるものとして説明できない
・薬剤投与中止後の有害事象の変化が薬理学的、病態的に(pathologically)妥当性がある
・有害事象が薬理学的の観点から説明できる(definitive)or現象学的(phenomenologically)なものである(例えば、客観的および特異的疾患)
・リチャレンジ陽性(必要な場合)
多分関連あり(probable/likely)・薬剤投与と有害事象or臨床検査異常との時間的関連性に妥当性がある(reasonable)
・有害事象が患者の病態or他剤によるものではおそらくなさそうである(unlikely)
・薬剤投与中止後の有害事象の変化が臨床的に妥当性がある(clinically reasonable)
・リチャレンジが必要と判断されなかった
おそらく関連あり(possible)・薬剤投与と有害事象or臨床検査異常との時間的関連性に妥当性がある(reasonable)
・有害事象が患者の病態or他剤によるものとして説明可能である
・薬剤投与中止に関する情報がないor不明である
多分関連なし(unlikely)・薬剤投与と有害事象or臨床検査異常との時間的関連性はなさそうである
・有害事象が患者の病態or他剤によるものとして説明可能である
判断するデータが不十分でより詳細なデータが必要(conditional/unclassified)・適切な評価をするためのデータor検査の追加データが必要
評価不能(unassessable/unclassifiable)・情報が不足or矛盾があるため判断できない
・これ以上の情報収集ができない

ロチェスター方式(Karch FE&Lasagna Lの基準

確実(definite)投与からADR発症の時系列が納得でき、ADRは薬物の薬理作用と合致する。服用中止により消失し、再投与により再現される。
十分あり得る(probable)投与からADR発症の時系列が納得できる。ADRは薬物の薬理作用と合致する。服用中止により消失する。ADRは原疾患で説明できない。
可能性がある(possible)投与からADR発症の時系列が納得できる。ADRは薬物の薬理作用と合致するが、原疾患でも説明可能。
場合による (conditional)投与からADR発症の時系列が納得できるが、ADRは薬理作用と合致しないが、ADRは原疾患で説明できない。
疑わしい(doubtful)上記のいずれにも該当しない

【FDA方式(Jones樹枝状アルゴリズム)5つのYes, Noの設問からなる比較的簡単なアルゴリズムによる分析法。判断の基準が一部明確でない部分が欠点である。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10278126/?from_single_result=10278126&expanded_search_query=10278126