【薬局薬剤師の立場から】風邪に抗生物質が処方されている。なんなのこれ?どういう事?(成人患者編)

風邪に抗生物質は効かきません( http://amr.ncgm.go.jp/general/1-6-1.html )。しかし、患者が風邪だと言って薬局に来た時に、「抗生剤が出てる~!(*’▽’)」なんてことはよくあります。なぜでしょうか。

理由は3つくらいでしょう。

① 抗生物質が必要な風邪だった。

→のちほど説明します。

②患者自身が抗生物質を欲しがった。

日本化学療法学会より発行されている「全国の診療所医師を対象としたアンケート結果」より 抗菌薬処方を希望する患者や家族への対応として、 説明しても納得しなければ処方する割合は50.4%、説明した上で処方しない割合は32.9%、希望通り処方する割合は12.7%となっています。

つまり、医師は処方したくないが、患者が希望して結局、処方してしまったという可能性があります。

③風邪の二次感染による重症化を予防する目的で処方された。

→今回説明は省略します。

①について、まず知っておかなければならないことは、「風邪」という言葉の意味です。

厚生労働省から発行されている「抗微生物薬適正使用の手引き 第二版」から、風邪とは 狭義の「急性上気道感染症」という意味から、「上気道から下気道感染症」 を含めた広義の意味まで、様々な意味で用いられることがある」とあります。

なるほど・・・意味があいまいですね。

でも「おなかの風邪」という表現もありますね。そうすると、ウイルス性胃腸炎なども風邪として認識され、気道感染以外も風邪に含まれると思われます。

ややこしいので、ウイルス性胃腸炎などは置いておいて、 抗微生物薬適正使用の手引きでは、風邪を4つに分類しています。

(1)「感冒」・・・感冒とは、鼻水・鼻づまり+咳・痰+のどの痛みが同時に同程度存在している状態。

同程度という表現もややこしいですが、1つの症状(例えば、咳)が特にひどいという状態ではなく、3つの症状が同時に同じ程度に発生している状態を指しています。


(2)急性副鼻腔炎・・・「鼻かぜ」と言われています。鼻水・鼻づまり・くしゃみを主症状とする病態です(細かいことは省略します)


(3)急性咽頭炎・・・「のどの風邪」と言われています。 のどの痛みを主症状とする病態です(細かいことは省略します)


(4)急性気管支炎・・・咳を主症状とする病態です(細かいことは省略します)


風邪には抗生物質は効かないといわれていますが、 「感冒」 「 急性鼻副鼻腔炎 」「 急性咽頭炎 」「 急性気管支炎 」と4種類も病態があるので、一概に風邪には抗生物質は効かないといってもいいのでしょうか。

抗微生物薬適正使用の手引き 第二版 を再度確認してみましょう。以下のように記載されています。

「感冒」に対しては、抗菌薬投与を行わないことを推奨する。


「急性鼻副鼻腔炎」

成人では、軽症の急性鼻副鼻腔炎に対しては、抗菌薬投与を行わないことを推奨す る。

成人では、中等症又は重の急性鼻副鼻腔炎に対してのみ、抗菌薬(アモキシシリン)投与を検討することを推奨す

急性副鼻腔炎に抗生物質の記載がありました。(重篤度の定義は、 抗微生物薬適正使用の手引き 第二版 に記載があります。)


「急性咽頭炎」

・迅速抗原検査又は培養検査でA群β溶血性連鎖球菌(GAS)が検出されていない急性咽頭炎に対しては、抗菌薬投与を行わないことを推奨する。
迅速抗原検査又は培養検査でGAS が検出された急性咽頭炎に対して抗菌薬を投与する場合には、抗菌薬投与(アモキシシリン)を検討することを推奨する

お口開けてください!風邪をひいたとき必ず実施されますよね。

この咽頭観察から、ウイルス性咽頭炎か、溶連菌性扁桃炎かを鑑別しています(咽頭観察結果+Mclsaacの基準に当て判断)。咽頭観察+ Mclsaacの基準 については、日経メディカルオンライン動画で 南多摩病院 國松淳和 医師が詳しく説明しています。

抗微生物薬適正使用の手引き 第二版 では 迅速抗原検査又は培養検査で確認するとなっています。しかし、風邪で実際そんな検査をしているか疑問ですが、咽頭観察から抗生物質が効くかどうか医師は判断しています。


急性気管支炎

慢性呼吸器疾患等の基礎疾患や合併症のない成人の急性気管支炎(百日咳を除く)に対しては、抗菌薬投与を行わないことを推奨する。

抗微生物薬適正使用の手引き 第二版に従うと気管支喘息や肺気腫など慢性呼吸器疾患等がある場合は、抗菌薬を処方するケースがあるということになります。

今回は厚労省の手引きに基づき記載しましたが、実臨床ですべての症例に対して手引きに従って抗菌薬の処方を検討しているわけではなく、またここで紹介しきれない内容も多々ありますことを、あらかじめご容赦ください。